京都の夏の風物詩「祇園祭」。 音(囃子)と光(提灯)の祭り
京都の「祇園祭」が始まります。夕刻の京の町には、町衆が奏でる祇園囃子(ぎおんはやし)が響き渡り、通りには町を彩る提灯が並び、それらが古都の祭りを華やかに見せています。行き交う人々も、浴衣を着て、うちわを扇ぎながら、夏の京都の風情の一つとなっています。
祇園祭は千年以上の歴史を持ち、1か月にわたって多彩な祭事が行われる八坂神社の神事祭礼です。その起源は貞観11年(869年)に、京の都を襲った疫病を鎮めるために、牛頭天王(八坂神社の祭神)捧げるお祀り(お祭り)が始まりとされています。
つまりは疫病退散を祈願した神事なのですね。
疫病の原因となる「怨霊」を慰める為に相撲や歌舞伎などの催しが、次第に町衆の楽しみとなり、現在の華やかなお祭り文化が定着していった様です。
この祭りで特に印象的なのが、「コンチキチン」と称されるお囃子の音色です。
太鼓、笛、摺鉦(すりがね)の3つの楽器のみで奏でるその音色は、リズミカルでシンプルなものですが、日本人が一度聞くと、お祭りを想起させ、日本人のDNAに刷り込まれた音源ではないかと思わせるものです。
そもそも、この「コンチキチン」も、お祭りを盛り上げるBGMではなく、神事の一つで「怨霊」を退散させる為の音響装置だったようです。次第に、その音源は室町時代に「能楽」に影響され、より文芸的でシンプルながらも洗練されたリズムとして深化しています。
京都での提灯は、単なる照明器具ではなく、歴史や文化を表現するコンテンツであり、また広告媒体でもあったようです。祇園などの花街では、それぞれの屋号によってデザインが異なり、また提灯の素材や制作過程も多種多様です。季節ごとに文様を変えたり、地域の行事やお祭りの際にも用いるもの選んでいます。家元に飾る提灯では、家紋を古来の特定の色合いにし、和紙の厚みから、軸となる竹の細さや本数まで規定があります。
この様な一つ一つに個性があり深い意味をもつ提灯ですが、お祭り期間の京の町に無数に飾られる事で、「和」という画一的な町並みに、音楽的でランダムなリズムが景観に加わり、夕暮れになると、なんとも幻想的な空間へと変わっていくのだと思います。そして、そこに「祇園囃子」の音色が重なると、町はいよいよ祇園祭です。