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シカゴ支社コラム 2024/06/01

廃墟の街 インディアナ州GARY

アメリカをドライブしているとよく廃墟ビルを見かけます。シカゴ市内にも歴史を感じさせる廃墟となった教会や劇場などが多くあり、どんな歴史を経てこのようになっていったのか、空想が頭をめぐります。マカオの聖パウロ天主堂のように表の外壁のみが残っている教会もあります。

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先日インディアナ州のGaryという街を訪れました。街の一部は、シカゴの中心地に電車一本40分で行けることから、住宅地として栄えております。しかし、街の一部は完全に廃れ、廃墟となった郵便局や高級アパートなどが多く目に入ります。この街は鉄鋼の街として1910年代以降鉄工所が閉鎖する70年代初頭までは大変栄えていたようです。アメリカ大統領選のニュースが出ると、トランプを支持しているラストベルトの労働者のことが報道されます。ラストベルトとは、東部の山脈近郊の豊富な天然資源と五大湖を中心とした豊かな水路での物流を利用して、工場地帯として経済発展を成したエリアです。シカゴはまさにその中心の一つでした。シカゴに限っては、工場は減少しましたが、他産業の発展で廃れることなく今も繁栄し続けています。Garyに限らずラストベルトには、旧態依然の産業が衰退して、ゴーストタウン化した街が数多くあるようです。

出典:エディターチョイス
私は2024 年に半世紀遅れで鉄鋼の街の衰退を実感しましたが、産業のサイクルがこれだ
け早い世の中ですと、産業の衰退による街の荒廃は世界中で起きているのかなと思いま
す。ビリージョエルの80 年代の曲にアレンタウンというペンシルベニア州の鉄鋼の街の絶
望を歌った曲がありました。
Every child had a pretty good shot 子供たちはみんなよくやったんだ
To ger at least as far as their old man got 親の世代と同じくらいのことを得ようと
But something happened on the way to place 何かが狂ってしまったんだ
They threw American Flag on our face やつらが星条旗を俺らに投げつけたのさ
この曲は80 年代ですと、ラストベルトで生まれた子供達が、不運にも親世代のレベルの
生活ができない不安を歌った曲に聞こえたでしょう。今の言葉でいう親ガチャでしょう
か。しかし、現在はどうでしょう?日本では失われた30 年のせいで、親世代の暮らしを
営めないのではという不安を抱えている子供達が多くいます。しかし、経済成長を遂げて
いる国でも、親世代の生活レベルを維持できるのか不安に思っている子供達は多いように
見受けられます。
当時は、衰退する産業に依存した街だけの話と感じていましたが、いつの間にかに世界共
通の問題になっている気がします。 “それなりの教育を受ければ、それなりに受けられる
安定した雇用”という社会の共通認識が当時のラストベルトから壊れ始め、その当時はそれ
以外の場所で起こるとは思えませんでしたが、今は世界中にその不安が広がっているよう
に思えます。