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シカゴ支社コラム 2024/08/09

シカゴでの政治活動をみて思うこと

このコラムを書いている7月31日は、トランプ候補がシカゴに来ております。8月中旬には、シカゴで民主党の党大会が行われる予定です。

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我々が事業を行っているシカゴ市の南部に政治イベントが多数企画されているコンベンションセンターがありますので、渋滞など日々の暮らしにも影響があります。我々のシェアオフィスは名門シカゴ大学から近く、若い起業家や大学での学びを活かしてビジネスをしている人が多く、概ね民主党支持者です。私は外国人なので、彼らは私にアメリカの政治を教えようと親切に説明してくれます。そんな彼らが口を揃えて言うのは、教育を受けている人達は民主党サポーターで、共和党の支持者は賢くない人達だということです。日本で報道されているように学歴でこのような形での、アメリカ社会の分断は確かに存在します。

以前日本の選挙戦略家がどのような人達をターゲットに選挙の作戦を練るかを説明していました。下記の表の通り横軸に変革を希望するか否か、縦軸に教育を受けたか受けてないかを記します。選挙戦略でターゲットにするのはこの表の②に属する人達だそうです。

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②に属している人達は、テレビの影響を受けやすく、若いフレッシュな議員が長老の議員などと決する場合に非常に大きな影響を選挙結果に与える層だそうです。確かにカマラハリスを推すために、民主党支持が多いアメリカメディアは、②の人達を刺激する報道をしているように見えます。私にアメリカ政治を説明してくれるシェアオフィスの方々は、民主党と共和党を分断するラインは教育を受けたか受けなかったかで区切る赤いラインの横軸だと信じています。彼らは、教育を受けたか受けなかったかを賢いか賢くないかと同意味で使用します。しかし実際彼らを分断しているのは、私には縦軸に見えます。教育を受けると現状に不満を抱き、何か新しいことをしたいという変わるべき願望が生まれるのでしょう。LGBT法案賛成など賢いからというより、学校という場所で影響を受けて変わるべきだと考えるようになっただけで、この表ですと上側に行ったわけではなく、右側に行っただけのようにしか思えません。最近の言葉で言うと、”意識高い系“になったように見えます。

日本の政治家で“意識は高いけど、賢さはない”の例を出しますと、小泉進次郎が、環境関連の国際会議に出席して(教育を受けたつもりになって)、変わらなくてはと思い立って行動を起こし、レジ袋を有料化して、石油の消費を減少させたと思ったら、ごみ処理焼却炉の燃焼力が石油で出来ているレジ袋の減少で弱くなり、追加の重油が必要となり、結果石油の消費も二酸化炭素の減少もどっちも達成できなかったという落ちです。このケースの場合、彼は国際会議で賢くなって赤い線の上に行ったつもりかもしれませんが、単に表の右側に行ったようにしか見えません。レジ袋の焼却が原因の二酸化炭素の排出が全体の何%程度なのか、そもそもの部分すら考えていないように見受けられます。彼のずれた政策は枚挙に暇がありませんが、もう一つ例を挙げると地方の役所の電気自動車購入に補助金を出すというものです。日本メーカーの電気自動車に限るというのであれば、まだ理解できますが、電気自動車はほぼ海外メーカー製であり、日本人が一生懸命に納めた税金をなぜ海外に回すのでしょうか?第一、内燃機関の自動車は日本の基幹産業であり、その競争相手に補助金を出すというのは理解不能です。間接的な日本メーカーいじめです。彼の立ち位置を上記の表で示すと、表の中に収まらないくらいの右下という感じでしょうか?正に規格外です。

私にはどう見ても、アメリカの分断は”賢いか賢くないか“ではなく、”意識が高いか低いか“の差に見えます。質の悪いことに、その差が収入の差になっていることも事実のようです。トランプ候補にも色々な論評がありますが、端的に表現すると、普通の意識の低いやんちゃなおじいさんです。進歩的な意識高い系の人達がなんとなく正しいという空気が過去20年程度世界的に広がっていたと思いますが、アメリカも進歩的で正しそうだった政治家が実は進次郎氏と同レベルだと気づき始めたのではないでしょうか。また、WOKE(目が覚めた)という言葉が英語で意識高い系という意味で使われています。もともとは、好意的な意味で使われていましたが、最近では否定的な意味で使う場合の方が多いかと思います。パリオリンピックでの性別問題も、馬鹿げたWOKEな判断などと言っている人もいました。一点、アメリカのWOKEな政治家を擁護しますが、彼らは進次郎氏のように自国の税金を他国の利益に使うようなことはしません。イタリアのメローニ首相、ドイツの為の選択肢、フランスの国民連合など、進歩的な人からは極右などと揶揄されていますが、彼らへの支持はWOKEな政治家が推し進めた近年の進歩的な政策への反発でしょう。今世界がそれらの政策を後悔し、逆回ししようとしているところで、日本だけが後追いでWOKEな政策をより強力に推し進めているように見えます。また残念なのは、それらの政策が議論の焦点にならずに、ほぼ全ての政党がWOKEな政策に疑問を持たないので、他国のように保守的な選択肢が日本から無くなっていることです。

時期的にコロナ以降ですが、世界的に自分の支持している政策を実行するのがどの政党なのか、どの政治家なのか、理解し始めた感じなのかと思います。例えば、普通の生活を普通に営みたいドイツ人は10年前だと、カーボンフリーとダイバーシティが自分の良い生活に結び付くのかな?国際的に正しい道なのかな?など漠然と思っていたかと思います。実際は、カーボンフリーの発電は電気代を上げるだけで、しかも巨大な太陽光発電所は自然環境を壊しているようにしか見えない、ダイバーシティは移民問題を引き起こして治安の悪化を招いているようにしか見えない。そんな普通の人達から、ドイツの為の選択肢という政党が支持を得ました。元々アメリカの共和党はお金持ちの為の政党で、労働者は民主党支持というのが一般的でした。しかし、ここ数十年、民主党は労働者の為なのか、ウォール街の為なのか良くわからない状態です。実際は、クリントン政権の頃から富裕層は民主党支持に変わっているようですが、今回のトランプ暗殺未遂は、共和党が労働者及び普通のアメリカ人の為の政党に生まれ変わった瞬間だと歴史的に評価されるかもしれません。ヨーロッパの様に、アメリカ人も誰がどの政党が自身の望む政治を行ってくれるのかを理解し始め、以前は空気を読んで口に出せなかったWOKEの人達は裸の王様だと言えるようになってきたのではと感じます。WOKEの人達は裸の王様だと声を大にして言うのは、ラストベルト生まれのヴァンス副大統領候補が適役でしょう。トランプが大統領になったら、WOKEな政策は廃止され、また国益を全面に出して、対日圧力もより強くなるかと思います。アメリカに思うように日本はやられてしまうことは避けて欲しいですが、日本への外圧で、日本人が進歩的政治で国益がどれだけ失われているかを気付く機会が訪れることを切に願います。